あらすじ
人生の最後に食べたいおやつは何ですか――
ポプラ社より引用
若くして余命を告げられた主人公の雫は、瀬戸内の島のホスピスで残りの日々を過ごすことを決め、穏やかな景色のなか、本当にしたかったことを考える。
ホスピスでは、毎週日曜日、入居者がリクエストできる「おやつの時間」があるのだが、雫はなかなか選べずにいた。
――食べて、生きて、この世から旅立つ。
すべての人にいつか訪れることをあたたかく描き出す、今が愛おしくなる物語。
小説“ライオンのおやつ”の感想と印象的なフレーズを綴る。
「毎日をもっと大切にしたくなる物語」と聞いて気になっていた1冊。
マドンナからの手紙から、物語が始まる。
読み進めれば進めるほど、余命宣告された雫が残りの日々を大切に丁寧に過ごす様子に、どうか1日でも長く生きてほしいと願わずにはいられなかった。
風が優しい、光がまぶしい、そう感じるだけで生きてると実感すると雫は思うのだ。
私は、風を感じて光を感じて、生きていると実感したことがなかった。それは、大袈裟に言うと粗末にしていることなのかもしれない。
生きることは本来美しいことなのだと思えた。
終わりがあるからこそ、命の重さと美しさを知る。
ライオンの家に来てから、雫は段々と死を受け入れていく。
受けれることは諦めることではなく、生きたい、もっと長生きしたいという気持ちも認めると言うことなのだ。
瀬戸内の島で、きれいな景色に包まれ、女神のようなマドンナがいて、小さい頃からの夢だった六花という犬を飼うことができ、人生最後と思える恋をする。
もう思い残すことはないはずなのに、もっと長生きしたいと思ってしまう。それは自然な感情なのだと思った。それは受け止めるべき感情なのだと思った。
もしかしたら、ライオンの家は天国に近い場所なのかも。いや、天国に行く前のプレスクール的なものなのかもしれない。
雫は、毎週日曜日に入居者がリクエストするおやつを味わうように、そのおやつが選ばれた入居者の人生に少し触れる時間、マドンナの優しさに包まれ、シスターやシマさんの言葉に感化される。
六花と一緒に寝たり散歩したり、タヒチと何気ない会話を楽しんだり、ひとつひとつのいとしい時間を瞬間を丁寧に味わって味わい尽くした。
命が尽きるその瞬間まで精一杯生きたなら、死とはそれほどこわいものではないのかもしれない。
マドンナがいう通り、気持ちの良いものなのかもしれない。
誰もがいつか訪れる、その出口に立つ日まで私も私の人生を味わい尽くしたい。
できることなら…、アワトリスさんのような最後を切望する。
そして今は天国にいる、私のじいちゃんもばあちゃんも愛犬も、こちら側にはもういないけど寂しさはあるけれど涙だけが悲しみを表す手段ではないと思えた。
心に残ったフレーズ10選
こちら側からは出口でも、向こうから見れば入口になります。
マドンナより
よく眠り、心と体を温め、よく笑うことです。いい人生を、送りましょうね。
マドンナより
人は死の直前まで変わるチャンスがある。
マドンナより
風が優しくて、光がまぶしくて、自分が生きていることを実感した。タヒチ君にいろんなことを伝えたいのに、感情は光の速さで心を駆け巡っているのに、それをうまく言葉にできない。だからたくさん笑った。
雫の想い
きれいな海を見て素直に心が癒されるようになったのは、下手にあがくことをやめてからだ。
雫より
おやつを前にすると、誰もが皆、子供に戻る。
雫より
なるようにしか、ならない。そのことをただただ体全部で受け入れて命が尽きるその瞬間まで精一杯生きることが人生を全うするということなのだろう。
雫より
思いっきり不幸を吸い込んで、吐く息を感謝に変えれば、あなたの人生はやがて光り輝くことでしょう。
シスターより
生まれるのも死ぬのも、自分では決められないもの。だから、死ぬまで生きるしかないんだよ。
シマさん
人の幸せっていうのは、どれだけ周りの人を笑顔にできたかだと思う。
先生の女房
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